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日影眩 凝視のエロティシズム 谷川渥編

絵画:日影眩
編集:谷川渥
出版社:論創社
サイズ:ハードカバー A5 (21cmx14.8cm)
ページ数:139p モノクロ
言語:日本語・英語
価格:¥2,000(送料無料)

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日影眩 ひかげげん
 日影眩の絵の熱狂的ファンであった漫画家谷岡ヤスジ氏の推薦により1979年から1982年まで東京スポーツ新聞に連載した絵を集めたものです。連載中に下から女性を捉える盗撮写真集「アクションカメラ術」が出版されてベストセラーを続け、他社が後を追っていわゆるローアングルブームと言われる現象が発生しました。1983年にブーム絶頂期の写真週刊誌「フォーカス」が元祖ローアングルとしてカラー見開きで日影眩の初個展を報道しましたが、肝心のその影響力を持った絵は、新聞の連載だったこともあり、また子供や老人を登場させる危ない絵と見なされたこともあって人の目には触れないままになりました。今日その幻の絵が美学者・谷川渥編集によって復刻版として一冊の画集になりました。今も地位ある男性が下から女性を盗撮をしてその地位を失うというニュースが続いていますが、その魔性の魅力を最初に表現したといえば、ネガティブな印象しか与えないかもしれませんが、下からのアングルはそのエロスを超えて広範囲の分野に取り入れられ、いわば視覚の常識を押し拡げる働きをしました。ぜひ人の心を捉えアングルの常識を変えた初源の絵の狂的で時にはユーモラスな触発的エロス全122点をお楽しみください。なお下からの視線「仰視」が特に注目されましたがこの原画ではその視点は360°である点にもご注目ください。(画家)

谷川渥 たにがわあつし
 日影眩における「仰視」とはなにか。便宜的に四つの季節に振り分けられたイラスト群のなかの、どの絵を採ってみてもいい。エロティシズムというよりむしろ端的にエロと言ったほうがふさわしいかもしれない卑猥なまでの数々の構図において、仰視は、窃視、いわゆる覗き見とは微妙にして本質的な差異を示す。覗き見は、一方的に眼差しを送るだけで、相手から眼差しを送り返されることはない。江戸川乱歩は、いみじくも「隠れ蓑」願望という表現を使ったが、覗き見する者は「隠れ蓑」のなかに身を隠して自分の存在をいっさい気取られないようにしなければならない。日影眩のイラストには、女を下から狙う少年やおじさんなどの男たちの姿が画面内に登場し、しかもその光景の外側からと言ったらいいだろうか、第三者の、とはとりもなおさず画家の、そしてわれわれ観者の視点によって、画面そのものが構成されている。そして眼差される女は、あらぬ方向に視線を彷徨わせるかと思えば、また眼差す男たちの、あるいは想像上の画家の(そしてわれわれの)ほうにみずから眼差しを投げ、ときとして目を合わせさえするのだ。だからどんなに覗きの場面を描いているように見える場合でも、まさしく《覗き見》と題された作品もあるが、そうした画面そのものは、覗き見として構成されているわけではない。 女のあられもない姿態あるいは痴態の連続に、これを浮世絵春画の現代版とみなす向きもあるかもしれない。だが注意しよう。日影眩の描く対象は、男女の絡みでもなければセックスでもない。男たちがどんなに女体に接近し、股間を覗き、またそこにに手を伸ばすように見えようとも、彼らが具体的に接触し密着することはまずないからだ。それらはすべて見る者と見られる者、そしてその光景を(画家ともども)見る者による視線のドラマにほかならない。そこには犬や猫の視線がかかわることすらある。(美学者・美術評論家)

 

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